薬は一生手放せない
(薬物療法の限界)
腎臓病は不治の病といわれ、クレアチニンの数値は、「一度上がったら二度と回復することはない」と、言われています。今の医療では腎臓病を治すことは出来ません。でも、腎臓病患者さんは、治療のためにお医者さんに行きます。
お医者さんからは、むくみの薬、血圧の薬、尿酸を下げる薬などなど、たくさんの薬が処方されます。
○○を飲んでむくみが減りました。
***を飲んで血圧が安定してきました。
△△△を飲んだら尿酸値が基準値に入りました。
確かに、薬によって症状は安定します。しかし、これらの治療は、薬で症状を抑えるだけで発症原因を治してはいません。ここに薬を一生手放せない理由があります。
食事療法をいくら頑張ってもやがては透析
(食事療法の限界)
腎臓は一度壊れてしまうと再生は出来ません。ただし、腎臓機能が停止して透析になるまでには10年20年単位の長い年月がかかります。
食事療法は、壊れていく腎臓を日々大切に使い、出来るだけ壊さないようにするためには必須の治療方法です。
腎機能が低下する原因の一つにタンパク質があります。
人体は、炭水化物、タンパク質、油脂という3種類の栄養素を体内に取り込んで生命を維持しています。腎臓が健康なら3種類の栄養素のうち、炭水化物と油脂は完全に消費されて老廃物は出しません。
しかし、タンパク質は尿素窒素や尿酸などの老廃物を血中に排出します。これらの老廃物は腎機能の低下に伴い血中に残るようになり、更に腎機能の低下を招き、やがては透析に入る大きな原因となります。
このため、透析にならないようにするためには、腎臓の機能低下に伴ってタンパク質の摂取量を制限する必要があります。
腎臓病における食事療法の主目的は、腎機能の低下を遅くさせるためにタンパク質の摂取量を抑制することにあります。しかし、タンパク質は人間が生命活動を維持していくには絶対必要な栄養素であり、一生摂り続けなければなりません。腎機能の低下を覚悟して摂取するため、やがては透析に入らざるを得ません。
運動療法は、まだ未知数
(運動療法の限界)
運動療法も腎臓機能を保存するための保存療法の一つです。
昔は、腎臓病患者さんは腎臓を保護するために、運動を控え安静にしているよう勧められてきました。しかし、2009年の腎臓病治療のガイドラインでは、軽度の有酸素運動を勧めるようになりました。
更に、2011年には日本腎臓リハビリテーション学会が、透析を先延ばしする方法の一つとして、病状に合った運動を積極的にするよう提唱するようになりました。
運動の効果は、腎機能の維持・改善、心血管の疾患の予防、体力低下の予防としています。新しい治療法が開発されたのはうれしいことですが、まだ研究が始まって日が浅いこともあり今後に期待したいところです。
いずれにしても、病状に合わせた運動をすれば透析を遅らせることが出来ることは分かっていますが、運動療法も食事療法と同じく透析を回避することはできません。
保全療法の限界
薬物、食事、運動療法の腎臓病治療は保全療法といって、壊れたはじめた腎臓をいかに長く保存するかという観点から考え出された治療法です。
上述したように、いずれも透析を避けることは出来ません。
したがって、腎臓内科に通う理由は、
①腎臓の壊れるペースを少しでも遅くすること。
②それでも壊れるペースが速まったとき、適切に透析に入る時期を判断すること
の2つです。
ですから、透析前の腎臓病患者さんの「絶対に透析になりたくない」と言う願いは、最初から叶うことはありません。
現在の医療現場における腎臓病治療の実態をお分かりいただけたことと思います。
内臓トレーニングという健康法には、原因療法を取り入れました(原因治療の発想)
透析を免れることは出来ないがそれでも何とかならないか、というのが腎臓病患者さんの切なる願いです。
この願いに応えるには、現代の腎臓病治療の主流を占める、保全療法の発想を切り替えることが必要になります。
以下に2つを発想してみました。
1 腎臓は、細胞という生命体から出来ているので、「腎臓の細胞」そのものを元気にする。
2 その細胞が壊れる原因を探し出し、その原因を直接治す方法を考える。
① 健康な赤ちゃんの腎臓は元気で健康です。成長しても薬を飲みません。普通に食事をし、十分に睡眠をとっていれば、それだけで元気です。人は成長してもこの条件を満たしていれば健康を維持できます。
② でも、健康な人でも長く生きていると腎臓を壊す人が出てきます。
その時、腎臓病を治すと称して、むくみ、高血圧、通風など各症状の治療に走ります。しかし、これでは「木をみて森は見ず」の格言どおり、腎臓全体を見渡して、発病原因を追究したり、何処に病巣があるかなどる壊れた腎臓の全体像を把握することはできません。
③ 腎臓が壊れた原因を探すなら、壊してしまった人の生活の中に原因があるはずです。壊れた原因を、壊した人の生活の中に探ってみましょう。
その原因を突き止めて、壊した生活習慣を改めて健康な人の生活に戻せばよいでしょう。
④ 生活の中で腎臓を壊す原因は、暴飲暴食、ストレスを溜める性格、ハードワークによる体力消耗、腎臓病を誘発する他の病気への罹患などです。これらの原因を一つひとつ根気よく生活の中で改めていくことが大切でしょう。(生活の中で治療する)
以上のような考え方から、内臓トレーニングは考案されました。
つまり、細胞を元気にして病に罹らないようにする。そして、もし罹ってしまったら、その原因を取り除いてやれば腎臓病を治せるだろう、と。
このような、内臓トレーニングの発想は原因療法と呼ばれています。病気に伴う症状を治す対処療法ではなく、病気の根本原因を取り除く考え方だからです。
腎臓病治療とは、自分で壊れかけた腎臓を大事に使っていくこと
現在の医療では、エコー検査などで腎臓機能が衰え、萎縮している様子を見ることはできます。そして、腎生検を通して、腎臓のどこが壊れて発症したかが分かるようになってきました。
症状を抑える治療は大変発達してきました。しかし、腎臓病の発症原因を治すまでには至っていません。
お医者さんの治療とは、病気の進行に伴う尿毒症の対症療法を行いながら、透析に入るまでの様子を観察し、透析に入れるタイミングを計ることです。
腎臓は、一度壊れてしまうと再生は出来ません。幸いなことに、壊れ始めてから透析に至るまでには相当な年月があります。壊れ行く腎臓を、日々大切に使い、出来るだけ壊さないようにするのが、現在における腎臓病治療といえましょう。
もうお分かりでしょう。
腎臓病治療とは、患者さん自身が壊れかけた腎臓を大事に使っていくことです。腎臓病は患者さんにしか治すことが出来ません。