命をつなぐ延命治療
血液透析とは
透析を行う機械に血液を循環させます。
週3回程度、透析を行う医療機関に通院し、1回4~5時間かけて行います。
導入前の処置として、透析機械に血液を循環させるために、手首近くの腕の動脈と静脈を手術でつなぎ合わせたり、人工血管で血管を太くします。これをシャントといい、手術後2週間ぐらいたってから使用することが望ましいので、計画的に手術を行います。
長期間使用で、血管がつまったり細くなって使えなくなることがあるので、シャントを圧迫したり衝撃を与えないよう、注意する必要があります。
腹膜透析とは
透析の装置として、機械ではなく自分の体の中にある腹膜を使う方式です。
(CAPD)交換は6~8時間ごと、1回30分くらいかかります。
通院は月1回程度です。1日1回、夜寝ている間に機械(自動腹膜透析装置)を使って自動的に腹膜透析を行うAPDという方法もあります。
導入前の処置として、透析液を出し入れするため、最初にカテーテルというチューブ(直径約5ミリ)をお腹の中に埋め込む手術をします。手術を受け、2週間ぐらい入院している間にバッグ交換などの操作の指導を受け、習得してから退院後は自分自身の手で行います。
感染を予防するため、毎日カテーテルケアをして、出口の部分とカテーテルを常に清潔に保っておく必要があります。
移植
ドナー (家族などの臓器提供者)から腎臓を移植します。
透析からは開放されますが、希望してもだれでも受けられるわけではありません。
移植手術を受けるリスクや負担が大きく、免疫抑制剤を飲み続ける必要があります。
移植後の合併症が起きたり、移植した腎臓がだめになることがあり、その場合は透析に戻らなくてはいけません。
透析による合併症
●動脈硬化–透析患者は動脈硬化が進みやすい。
●心不全–体の水分量が透析毎に大きく変動するため、心臓に大きな負担をかけ、働きが悪くなる。
●感染症–免疫力が低下し、感染症にかかりやすい。
●悪性腫瘍–悪性腫瘍の発生率が一般より高い。
●腹膜炎・被嚢性腹膜硬化症–腹膜透析による合併症。
費用はどのくらいかかる
1人当たりの透析の年間費用は620万円(尼崎市役所調べ)ともいわれています。
このうち個人負担分は年間約12万円で、治療費の9割を国と地方自治体そして企業の健康保険組合が負担しています。国全体の総額は1兆8,000億円を超えていることになります。
透析の実態
食事制限
食事療法透析前も、タンパク質やカリウム、リンなどについては厳しい制限がありました。
透析に入ってもその制限は変わりません。
透析前と透析後の腎臓の機能を比較すると、透析前の瀕死の腎臓よりも透析器の方がろ過機能が高いため、多少食事制限をゆるめても尿毒症の症状がでません。しかも、身体も軽く感じます。「透析に入ったら何でも食べられる」という甘い言葉はそこからきています。
しかし、その言葉に乗って弛めたままでいれば、透析予後が短くなってしまいます。
透析に入った人は、透析患者特有の合併症に気を付けなければなりません。
例えば、リンが蓄積すると副甲状腺が腫れてきます。蛋白質が骨や関節に蓄積したり、カルシウムが不足すると骨粗しょう症になったりして、様々な合併症が出てきます。
ですから食事をゆるめれば合併症が早く発症することになります。
水分制限
透析に入るときは、ある程度の腎機能を残して入ります。
腎機能に余裕があると透析にスムーズに入れるし、透析後の予後が長くなるからだといわれています。
しかし、透析に入ると腎機能は急速に衰えて、やがて尿が出なくなります。
無尿になると飲んだ水はすべて体内に溜まり、ひどくなると心臓や肺にまで水が溜まることになります。このため透析では、血液中の水分を抜く(除水)ことになります。
1回の透析で2キログラム前後を除水します。
一度に大量の除水をすると血圧が下がり、気を失うことになります。無尿の透析患者は水分制限を厳しくしなければなりません。
夏の暑い日にはビールを飲みたくなっても泡を舐めておしまい、水も飲めずに冷凍庫の氷を2,3回舐めておしまいということになりかねません。
透析中はできるだけ起きている
透析では、ダイアライザーに血液を送るために太い針を刺します。もし、その針が抜けてしまったら血圧が下がりすぎて気絶してしまいます。過度の除水もけいれんを起こしたり、気を失ってしまいます。
透析中は常に死と隣り合わせです。
長く透析している人は、透析中に隣の人が気を失い救急車で運ばれて、そのまま帰ってこないというケースに何度か遭遇していると言います。
いつ自分の番が回ってくるか分らないので、本を読んだりテレビを見たりして眠らないようにしているそうです。
なお、透析中に万が一のことが起こったときは事故死として扱われます。
その他
腎臓病と診断された人は、皆さん「透析に入りたくない」といいます。しかし、何の根拠もなく「わたしは透析にならないと思う」と希望的観測を述べて、透析を見つめようとしない人もいます。
血液透析の情報はネット上に溢れているので、実際に透析をされている人達から聞いたお話を紹介してみましょう。
透析にさせたくない理由
当協会は、近年腎臓病患者さんの支援に力を注いできました。
透析だけは絶対に避けたいと願う患者さんと、透析ありきの医師との間には非常に大きな意識の乖離があります。
患者さんにしてみれば、腎臓病は治らない、クレアチニンは下がらない、もうすぐ透析と、病院からは必ず否定的な言葉を掛けられ、闘病生活に希望を見出せなくなっています。
そんな中で、病気と正面から向き合う患者さんは、最後は透析に入るかもしれないが、それまでの間を、希望を持って質の高い生活を送りたいと考えています。
このような患者さんに内臓トレーニングという健康法を通して支援しております。
国の医療費削減に貢献する
医療費透析患者の年間医療費は約620万円といわれ、単純計算で、約30万人の透析費用は1兆8,000億円に上ります。この莫大な医療費のほとんどは税金で賄われており、財政逼迫する日本の医療費の大きな負担となっています。
当協会では、このような現状を踏まえ、患者の透析に入る時期を1年でも先延ばしできたら、透析患者自身が透析費用を負担せよという、近年話題になりつつある心配を払拭できるのではないかと考えました。そこで、下記の三つについて活動を進めてきました。
1.病気に正面から向き合ってもらうための啓発活動
2.透析の時期を先送りするための技術指導
3.透析患者の質の高い生活を保つための指導
この結果、主治医から透析に入ることを宣告された患者が、6年も透析を回避する人が出てきました。
ここまで極端な例をあげずとも、2年3年と時期を延ばしている人がたくさん出てきています。腎臓病患者の体を信じて、彼らに寄り添ってこれからも活動を続けていく所存です。