慢性腎臓病・腎不全
腎臓の働きが衰えてくると、一般に慢性腎臓病とか慢性腎不全と診断されます。しかし、この名称は「腎臓の機能が衰えてきていますよ」と腎臓の働きの状態を表した病名で、いわゆる警告のための名称と考えるとわかりやすいでしょう。
ですから、腎臓のどの機能が衰えてきているのか、腎臓のどの部分が壊れているのか、病気の原因がどこにあるかを指摘した名称ではありません。
近年は、医学の進歩により、壊れた部位(原疾患)やその症状から腎臓病を的確に表現する病名が付けられるようになってきました。まだ、原因が分らない腎臓病もありますが、現在、日本透析医学会が発表している腎臓病の原疾患数は20種類に達しています。
糖尿病性腎症
日本人は、遺伝性のⅠ型糖尿病が10%と少なく、Ⅱ型糖尿病が90%となっています。現代日本の豊かな食生活と運動不足の生活により、糖尿病患者の数は年々増加し、日本の糖尿病の患者数は316万6,000人、(「平成26年患者調査の概況」厚生労働省)予備軍は1,100万人を超えます。(「平成24年国民健康・栄養調査」厚生労働省)
糖尿病は、血液中に糖が残ってしまうため、血液はドロドロ、血管はボロボロになり、全身の血流が滞ってきます。このため、目には網膜症、神経の細胞も破壊されて手足に痺れやむくみなどが発症してきます。
腎臓も、毛細血管の塊である糸球体が破壊されて、老廃物の濾過ができなくなり、高血圧やタンパク尿が発症し、やがてはネフローゼ症候群となるなど、他の腎臓病に比べてその進行が早いことが特徴です。
また、血流の滞りから血管がもろくなり、血管が透析に耐えられなくなる前にシャント手術をすることにより、腎臓病だけの患者よりも早めに透析に入ることになります。
このため、近年は、毎年、透析導入される患者のうち、糖尿病性腎症の患者が43%でトップとなっています。
IgA腎症
iga糸球体という器官が壊れる病気の一つです。糸球体に免疫グロブリンのIgAというタンパク質が沈着して発症します。
自覚症状はありませんが、病気が進行すると尿タンパクや血尿が出て、食欲不振、疲れやすい、だるいなどの症状が出てきます。
腎臓病は比較的高齢者の病気ですが、この病気は10代の若い人も多くなっています。近年、ステロイドパルス療法や扁桃腺摘出手術が有効と言われています。
慢性糸球体腎炎
糸球体という器官が壊れる病気の総称です。
腎臓には糸球体と呼ばれる毛細血管の集まった器官があります。これは全身から老廃物を運んできた血液を濾過する役目を持っています。この糸球体が壊れると体内に再吸収されるはずのタンパク質が尿の中に流れ出て、いわゆるタンパク尿や血尿が出るようになります。
この時点では、クレアチニン値は基準値内ですが、すでに腎機能の低下は始まっています。
ただ、自覚症状がほとんどないため、発見が遅れることが多くなっています。病気が進行するとむくみやだるさ、疲れやすい、食欲不振などの症状が出てきます。
腎硬化症
長い間、高血圧を放置しておくと血管が硬くなる動脈硬化になります。
腎臓の毛細血管で動脈硬化が起きると組織が破壊されて機能低下するのが腎硬化症です。初期は自覚症状がありませんが、症状が進むと高血圧、動脈硬化、むくみ、倦怠感、貧血、息切れなど腎臓病に共通する症状が出ます。
ネフローゼ症候群
糸球体基底膜が壊れることによって、尿に大量のタンパク質が流れ出し、血液中のタンパク質が減少し、むくみやコレステロールなどの脂質が増える病気です。
原因は多々あり、糖尿病性腎症や膠原病などが原因のこともあります。
症状としては、尿が出にくくなり、顔や手足のむくみ、胸や腹部に水が溜まったりします。また、血液中に脂肪が溢れるので血液が固まりやすく免疫力が落ちて感染症に罹りやすくなります。
多発性のう胞腎
遺伝性があり、腎臓にのう胞(水がたまった袋)ができる病気です。その数が増え、袋が大きくなっていき、腎臓を圧迫して腎臓機能を低下させます。アルブミンなど血液中のタンパク質の濃度が低下することによって血液中の脂肪が増え、その結果感染症にかかりやすくなります。
初期は自覚症状がありませんが、症状が進むと高血圧、食欲不振、疲れやすくだるいなどの症状が出てきます。また、のう胞が大きくなってくると腹部が膨らみ、圧迫感を感じるようになります。